【Case 18】50代半ばからのリストラ再起物語。

MMさん50歳/男性/転職2回

「申し訳ない。来月いっぱいで会社を辞めてもらえないか。」

そう社長から言われたのは、コロナ禍による2度目の緊急事態宣言が始まってしばらく経った2021年春の事でした。


目の前が真っ暗になりました。「家のローンの支払いどうしよう」「生活はどうしよう」・・・頭の中でグルグルと浮かんでくるのは、先々の不安のことばかり。その日の帰り道はどこをどう歩いたかわからず、気づいたら家の前に立っていました。

妻にも説明しなければなりません。でも、妻に話したらどんな顔をするだろう・・・。不安と申し訳なさと自分への情けなさで心は爆発しそうでした。しかし、話さないわけにはいきません。意を決して帰宅後、妻に話しました。

「リストラされてしまったよ。ごめん。」

一瞬妻は固まった表情をしましたが、すぐに笑顔になってこう言いました。

「大変だったね。まずは晩御飯食べよう!」

その後、これからのことを妻と相談しました。不幸中の幸いとして、結婚して20数年、子供は社会人になっており独立していました。だから、妻との生活が成り立たせることができれば良い。そのために必要な生活費や家のローン、それに今の貯金額など色々数字を整理しました。いずれにしろまだ50代半ば。転職できるなら転職しなければなりません。くよくよしている時間はない。私はすぐに転職活動を始めるべく、相談できる人にどんどん連絡することにしました。

私の元職場はいわゆる工具メーカー全般の販売代理店をしている企業でした。給与も日本の平均所得と呼ばれる金額よりは多かったですが、年俸制の契約。環境も独特で、「与えられた仕事と成果が出なければリストラ対象」という状況だったんです。

工具メーカーとしては、東京オリンピック開催による建設特需や、工具の代理店契約による独占の強みがあったため、1人親方の職人様から工務店、企業様など複数の販路はあり、会社全体の売上成績も悪くありませんでした。しかし2020年に入ってからは一気に買い控えの姿勢に変わります。

いわゆるコロナショックをまともに受けたというわけです。

工具のように消耗性のある機械は保管しておいても良いので、一定のサイクルで入れ替えたり、新製品が出れば効率化を求めるお客様は率先して購入してくれていました。

しかし、新型コロナウイルスによる自粛や緊急事態宣言などが重なった結果、需要は激減。平常時であれば一定のサイクルがありますが、長期化する新型コロナウイルスの問題で工具そのものを使用する機会を失ってしまったわけですから、構造として見れば当然の結果です。

もちろん、私を含めて販売や契約を受け持つ社員は新規の販路開拓など、色々な取り組みをしました。以前は直接訪問してお話していた企業様などはZoomなどを利用したり、感染対策をしながらでも出来ることは全てやったと思います。

関東に住む私にとっても、会社にとっても感染者数の増加はリスクが増えていくように感じられましたし、実際に会社が籍を置く区からも指導や要請などで出社出来ないこともありました。会社の売上はみるみる減っていき、社内には悲壮感が漂っていました。

そんな中、告げられたのが冒頭でもお話した「リストラ」です。

仕事が好きでしたから、これほどのショックは過去になかったかもしれません。依願退職という扱いですが、実質的にはリストラ以外のなにものでもありませんでした。

リストラが決定してから私は会社の残務を片付けながら、隙間時間で昔の知り合いや仕事仲間、学生時代の友人にも連絡を入れ、仕事を探しました。職業安定所にて求職申込みをしましたが、私と同じような境遇の方も多い様子でしたし、何よりも混雑を避けるため具体的なお話をすることそのものが難しい状況でした。

プライベートで親交のあった保険屋さんにも相談してみました。彼らは色々な会社とのお付き合いがありますから、どこか求職しているような会社をもしかしたら知っているかもしれないと思ったのです。その人からは「私のほうでも直接何社かの企業さんにあたってみますが、急ぎ転職エージェントへの登録をしてみてください。」と言われ、紹介された転職エージェントの方にお会いすることができました。

エージェントの方には、今までの状況や退職理由、当面の生活費の確保にあたって使える公的サービスの紹介、転職にあたっての希望する会社や職業、業界など、細かい部分につい色々と話をすることができました。

もちろん、話をいくら聞いてもらったとしても私は50代。転職先がすぐに見つかるとは思っていません。転職エージェントの方からは「正式に決まるまでは少し時間がかかるかもしれません」と正直に言われましたが、その時気休め程度に「すぐに見つかりますよ」と言われるよりも、逆に心強く感じたことを覚えています。

その後、約2ヶ月の間に2社と在宅で面談する機会をもらえましたが、そこはやはり年齢的な問題が。しかし「絶対に転職してやる!」というモチベーションを持ち続け、6社目の企業様に採用して頂けることになり現在に至ります。転職エージェントを利用しはじめて4ヶ月後のことでした。

職業安定所にも合間で通っていましたが、ほとんど事務的なものだったため、雇用保険から発生していた保険料の手続きだけをして終わりました。

給与面では年収換算で20%ほど下がりましたが不満はありません。必要としてくれる場所で働けるようになっただけでも正直私は運が良かったかもしれないとも思っています。

後から面接を担当してくれた人事の方とお話させて頂きましたが、50代になると仕事の経歴など過去の問題よりも、今から仕事で何を提供出来そうかという部分で判断していると言っていただきました。とくに今のように直接面接があまり出来ない環境では、表情や話し方1つで印象が変わるというポイントもお聞きしましたが、実はこれも転職エージェントで受けたアドバイスにあったことなんです。

転職が決まるまでに、大変多くの人々に話を聞いてもらったり、実際会社を紹介してもらったり、助けてもらいました。その中でも転職エージェントの方との時間は大変貴重で、色々な面でサポートしてもらいました。ありがたいというか、感謝しかありません。

私の仕事人生は終盤戦。この先どんなことができるかわかりませんが、今は受け入れてくださった会社に恩返しをしたい気持ちでいっぱいです。また、青臭い精神論に聞こえるかもしれませんが、最終的には家族の励ましや、「ここでもう一歩だけ踏ん張るぞ!」という気持ちを保てたことが、今の職場と出会えるキッカケになったのだと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次