【Case 15】「入院先にPC持って行ってね」と言われて始まった、私の転職物語。

MMさん32歳/女性/転職1回

「入院先にはパソコン持って行ってね」

人生で初めての転職を決意したきっかけは、この上司の一言でした。

新卒で入社したのは中堅の広告代理店。最初は大手志望だったのですが、就職活動をしている中で色々な会社情報や先輩方の話を聞いているうちに、大手で歯車として働くのではなく、会社の規模は少し小さくても色々な仕事をやらせてもらえる会社で働きたいと考えるようになりました。

その後苦戦したもののなんとか中堅の広告代理店から内定が出て、私の社会人生活が始まりました。憧れの広告業界で働けることが嬉しくて、言われた仕事を頑張ってこなす日々。そのうち少し難しい仕事ももらえるようになって、どんどん忙しくなっていきました。入社3年が経った頃には、始発出社、終電退社なんてことも珍しくないくらいに。同期も同様にどんどん忙しくなっていく中で、同期に絶対負けてなるものかとガムシャラに働く毎日でした。

その頃の私の仕事の内容はコピーライティング。いずれコピーライターになって名前を売り、自分の好きなように仕事をしたいという野心がありました。コピーライティングというと、有名コピーライターがさらっとおしゃれな言葉を書いて「はい!決定!」なんていうイメージでいましたが、実際の現場はまったくそんなものではありません。

提案先の会社のことを対象製品はもちろん歴史含めて徹底的にリサーチし、会ってもらえるなら何人とでも面談させてもらい、とにかく情報収集と整理をする第1段階。その後、対象製品のコピー、つまりセールスワードを果てしなく考え続け更に提案先とディスカッションを進めていく第2段階。その後、会社にもよりますが提案先の社長や役員へのプレゼンを経て決定するというのが一般的な流れ。最終的に世の中に出るコピーは1つですが、そこに辿り着くまでには時には10,000個を超える没案があるような厳しい世界。

コピーが固まったらそこで終わりではなく、イメージキャラクター、グラフィック、映像と最終的に消費者に届けるイメージを専門のチームと作っていきます。学生時代には想像もつかなかった世界。下っ端の私は経験豊富な先輩方に囲まれ、言われたことは何でもやり、仕事を覚えよう、盗もうと必死についていきました。

入社3年が過ぎたころから、同期がポツリポツリと退職していくようになりました。その頃の私はとても嫌な奴で、辞めていく同期を「逃げ」たと少し思っていたんです・・・本当に嫌な人間でした。でもそう思っていた私は「私は絶対負けない」「仕事は辛くて当たり前」とか考えていました。今思えば肩ひじ張って、強がって、平気なふりをして・・・でも本当は毎日心が折れそうになっていたんです。

いくら仕事が大変だからと言って、土日も出社、平日は毎日終電帰りなんて生活を何年も続けていたら、心も体も心底疲れ切ってしまいますよね。結局そんな働き方をしていた私はある日急にめまいがして倒れ、そのまましばらく入院ということになりました。

その時に上司に言われたのが、「入院先にはパソコン持って行ってね」。「あ、はい、わかりました。」とその場では答えたのですが、その後なんだか涙が止まらなくなってしまって・・・。仕事に負けるのは悔しいけど、「いったんこの状況から逃げよう。そうじゃないとわたし壊れてしまう」。ものすごく悩みましたが、最終的に退職を決意しました。

コピーライティングの仕事は本当に楽しいものでした。自分が加わったチームで生み出した言葉やイメージを街で見かけると、それはもう誇らしい気持ちになりました。それに、たまに実家に帰った時にその話をすると、両親もとても喜んでくれました。

でも、心身共に健康で心が安定している状態じゃない人が、誰かの心を動かす言葉なんて作れないんです。だから、退院後頑張って仕事を続けたとしても、おそらく戦力にならなかったんじゃないかと思います。

会社を辞めた後、転職エージェントに登録して転職活動を開始しました。かつての野望などはもはやなく、また同業に転職することも消極的に。キャリアや年齢を考えれば、おそらく他の広告代理店でまた働くという選択肢が転職の最短コースだとは思っていたのですが、同じ仕事をすることになったら、辞めた会社と同じ内容、環境で働くことになるのは目に見えていました。だからエージェントの担当者の方にも色々話を聞いてもらったりアドバイスをもらい、異業種を探しました。最終的にWEBメディアの会社に転職することになりました。

転職した会社はワークライフバランスを重視してくれている会社で、土日休みはもちろん、平日もなるべく早く帰るように言われています。「心が平穏だったりプライベートが充実しているからこそ、良い仕事ができるんだよ」と転職先の上司に言われたときにすごく心が安らかに感じました。

今はまだ転職したばかりで仕事の流れを覚えることに必死ですが、言葉を扱う仕事を長く続けていたので、いずれWEBコンテンツ制作でその経験を活かせればと思っています。

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