【Case 12】「幸せになるために働きたい!」とブラック企業を飛び出した私の物語。

SSさん/26歳/男性/転職1回(現在転活中

今思えば、もっと早く退職するべきでした。

新卒で入社した会社は、中堅の不動産会社でした。入社後3か月間は仮採用で、その間は研修を受けるという説明を受けていたのですが、出社初日から研修という名の電話営業をすることに。学校出たての新入社員が、いくらレクチャーを受けたとはいえ、いきなり電話営業などしても成果が上がるはずもありません。しかし、今の自分は仮採用で、3か月後に本採用になるためには成果をあげるしかないと必死で頑張りました。

その頃の1日のスケジュールは、朝7時出社。その後朝のミーティングと朝礼を行い、9時から電話営業開始。お昼休みは一応12時~13時と決まっていましたが、ゆっくり休める雰囲気ではなく、コンビニで買ってきたおにぎりなどを食べながら仕事を続ける感じでした。また、18時に電話営業は終了するのですが、そこから3~4時間ほど報告会議がありました。そこでは、今日自分がやった電話営業の内容と反省を、全員の前で一人一人述べさせられるのですが、その席では毎日誰かが上司からキツク叱責されていました。もちろん私も叱責を受けたのは1度や2度ではありませんでした。そして日報を書いて退社。毎日7時~終電まで働く日々でした。

そんな過酷だった3か月の「研修」を終え、わたしは無事本採用になり営業部に配属されました。同期入社は50人ほどいたのですが、何人かは既に退職していました。中には本採用されない人もいました。

営業部に配属されてからは、アポイントリストを手に毎日外回りの営業です。上司や先輩と一緒に、朝から晩まで、晴れの日も雨の日も商談先を回り歩く毎日でした。帰社してからは、営業会議が19時から始まります。予算を個人に割り振られているので、その進捗の報告と今後の対策などを一人ずつ報告していきます。営業部は30人ほどいたのですが、全員の報告が終わるまで続くので、退社するのは毎日終電ギリギリ。ひどい時は電車が無くなるので、会社近くの漫画喫茶で寝たこともあります。平日だけでは仕事が終わらないので、土日出社もあたりまえでした。

元々学生時代は陸上部で長距離を走っていたので、体力だけは自信があったのですが、この生活が1年ほど続いてくると常に疲労感を感じていました。しかし、体力的な事に加えてさらにキツイのは、毎日の営業会議での上司からの叱責でした。営業成績が悪いと、日々の仕事の進め方への指導だけではなく、人間性を否定されるようなことを言われることも多々あり、それが一番キツかったです。

言葉は選びますが、「人間としての礼節に欠く」とか「親の育て方が悪かったのでは」など。今思えば、なんでそんな事を言われなければならないのか?というようなことを私も散々言われました。しかし、当時の私はそのような環境に慣れてしまっていたし、上司の叱責を「愛のムチ」と受け止めるようにしていたため、怒られるたびに自分を責めていたように思います。営業成績が悪いのは、「自分の努力が足りないから」「自分が人間的に未熟だから」と・・・。

そんなある日、営業部の先輩が退社しました。その人は営業成績が常に悪く毎日上司に叱責されていたのですが、最近は体調を崩して休みがちになっていました。そして、いよいよ入院となったタイミングで辞めることに。どうも会社からは休みがちになった時点で退職を勧奨されていたようです。散々会社のために働いてきたのに、体を壊した人をあっさり退社させる様を見て、私の心は急激に冷めました。「この会社にいても使い捨ての駒としてしか扱われないんだな」。そして、私も退職することに決めました。

しかし、そこから辞めるまでが大変でした。退職願を出した上司からは「受理しない」と言われ、連日慰留されることに。慰留を固辞していたのですが、さらに上の本部長まで出てきて慰留されることに。今まで「辞めろ」と言われたことは1度や2度ではなかったのに、いざ辞めようとすると慰留される。もう訳がわからない状況でしたが、私は辞める決意を固くしていたので、とにかく1日も早くこの会社から抜け出したいと思い、最終的に退職願を出してから2か月後に辞めることができました。

私の1社目の就職はいわゆる「ブラック企業」でした。それは就職してほどなく分かっていたことでした。しかし、仕事がきついのは自分の弱さや経験の無さにも原因があると思い、成長するために必要な試練だと受け止めて頑張ってきました。今思えばその時の経験は無駄ではなかったと思います。しかし、人を使い捨てるような会社のやり方には我慢できませんでした。そのまま長く務めたところで、いつクビになるかわかったものではありません。

また、その頃よく考えていたのは「なんのために働くのか」ということ。仕事が大変なのはみんな同じ。でも、毎日早朝から深夜まで働いたところで大金が貰えるわけでもなく、平日も週末も働いているうちに友人たちとも徐々に疎遠になりました。その頃の自分には私生活などなく、会社で働くか、ご飯を食べるか、寝るか、しかない毎日を過ごしていました。そんな生活がいつまで続くのかもわからず、なんとなく気持ちもササクレ立って、投げやりな気持ちになっていました。体を壊して辞めていった先ほどの先輩。他にも、うつ病になって休んでいる同僚も数名。それに対して冷たい対応をする会社。人生を掛けて働いて、人生を壊されていくのが「働く」ということならば、「働く意味」ってなんだろう・・・。その答えはまだわかりません。

今はいったん実家に戻り、転職エージェントに登録して次の就職先を探しています。次は社員を大切にしてくれる会社に入りたいと強く願っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次